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【図書新聞連載】図書館に会いにゆく――出版界をつなぐ人々

対面販売で本の商いの原点を貫く〝学校図書館営業〟
利活用を進めるには蔵書の充実、電算化、司書配置のための予算化が必要
第20回(番外編)図書館流通センター・PS事業部

かつて閉鎖されている時間の長さから〝開かずの図書館〟と揶揄されてきた学校図書館。文部科学省が学校図書館の利活用を推進しているが、現場からはなかなか整備が進まないという声も伝わってくる。しかし、一昨年には学校図書館法が改正され、学校司書が法制化された。昨年には文科省が学校司書の資格・養成・職務の充実などを検討する「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」を発足させた。さらに今年に入り、来年度以降の「学校図書館図書整備5か年計画」の延長を訴える学校図書館議員連盟の集会が2度開かれるなど、学校図書館に注目が集まっている。ここでは、図書館流通センター(TRC)で学校図書館を担当する学校図書館営業部の瀬戸竜次部長に、同部署の業務内容を通じて、学校図書館の現状と課題を聞いた。

学校ニーズに即して自ら〝訪問販売〟へ

図書館流通センター・学校図書館営業部の瀬戸竜次部長
学校図書館営業部の瀬戸竜次部長

図書館流通センターで学校図書館の業務を担当するのがPS(プロモーションサービス)事業部という部署である。主な業務は、選書・注文から装備・納品までの図書回りのトータルサービスを中心に、図書の検索や発注などが可能な学校図書館支援ツール「TOOLi-S(ツールアイエス)」の提供、図書館の電算化のサポートなど、学校図書 館業務の多くに関わる。TRCと取引のある公共図書館の場合、本の注文から出荷までは図書館司書のニーズに応じてシステム化されている業務に対し、学校図書館の業務はニーズがあれば、営業自らが本を売りこむ〝訪問販売〟のスタンスをとる。

PS事業部において、実際に訪問販売を担うのが、小・中・高等学校の学校営業を担当する「学校図書館営業部」のメンバーである。営業担当者は約30人。首都圏地区(東京・千葉・埼玉・神奈川)を除いて、北海道から九州まで日本全国の主要地域に支社や拠点を構え、営業担当者は基本的に現地に居住している。そのほか、学校図書館の物流担当、学校からの問合せを受ける学校図書館カスタマーセンターを含めて、同事業部は総勢57人。事務所は物流拠点である「新座ブックナリー」にある。

TRC内では首都圏以外の学校図書館の営業担当者をプロモーターとも呼んでいる。彼らは、学校営業の仕事に加えて、公共図書館を中心に、手にとって見てもらいたい既刊本の見計らい(見本の図書を展示)をして注文を募る「ブックキャラバン」という仕事もこなす。ブックキャラバンは春(1~3月)、夏(5~8月)、秋(9~11月)の年3回にわたって開催。加えて、児童書カタログの中からセレクトした図書を見本として持ち込む通年企画も実施している。いずれも「高額な図書などは実際に現物を見て購入したい」という司書の要望に応えるためのもので、TRCがTOOLiや「週刊新刊全点案内」で実施する公共図書館への〝通販機能〟を、現場で補完する役割を担っている。

「学校図書館への営業と公共図書館に対する見本の見計らい販売は、一見関連性のない仕事にみえるかもしれないが、実はそうでもない。定期的に公共図書館へ足を運び、図書を紹介することで、互いに顔が見え、信頼し合える関係を築くことができる。また、そのような関係を築くことによって、公共図書館からも、その地域の公共図書館を管轄する社会教育課もしくは生涯学習課などの人からも、学校図書館の情報を得ることができる。ひいては、地域の教育委員会で学校図書館を管轄する学校教育課などの学校関係を担当する部署の方々とも会話する機会をつくることができるなど、営業的には非常に有効」と話す。

まさに、〝TRCのプロモーター〟となって、担当地域の公共・学校図書館の両面から、図書館サポート会社としてのTRCの機能を啓蒙促進しているのだ。

首都圏は学校が専業 アドバイザーも設置

では、学校図書館営業とは具体的にどのような活動をしているのだろうか。

まず、学校図書館を契約形態別にみると、「随意契約」の学校と、「教育委員会一括契約」とに分けられる。「随意契約」とは、学校長決済でTRCから本を購入する学校図書館を指す。図書の購入を担当している教員次第で購入先が変わることもあるため、「常にTRCのサービスを売り込みにいかないと、取引先を変えられてしまうこともある」という。

一方、「教育委員会一括契約」というのは、その地域にあるすべての学校と、一括で図書の納品や図書館運営システム(TOOLi-SやTRCMARC)の提供などを契約するもの。地方に多いケースで、「『図書室を担当する忙しい教員や学校司書が子どもたちと向き合う時間をつくるために、注文から装備など図書に関わる裏方作業はTRCが引き受けます』という趣旨を理解してもらった自治体と契約している」。

こうした顧客に対して営業担当者は、教育委員会の担当部署と定期的に打ち合わせをしている。また、先の随時契約の学校の場合は、学校の図書担当の教員や学校司書と直接会話するという。

とくに首都圏は随時契約の学校が多いため、ブックキャラバンと学校営業の担当を分けているうえ、営業担当とは別に図書担当の教員の相談などを受けるアドバイザーを設けている。営業担当は主に教育委員会への訪問、アドバイザーは各学校の訪問と作業を分担。アドバイザーは図書担当の教員に、選書の方法や発注の仕方など細かな図書館業務について説明をするのが主な仕事という。

「一昨年に学校図書館法が改正されて、学校司書が法制化されたが、現在、学校司書が配置されている小中学校は全体の50%程度といわれている。全国に小中学校は3万2000校あるが、その半数に学校司書はいない計算だ。では誰が選書や図書の購入をしているのかといえば、主に図書担当という役目を振り分けられた教員がその業務をみている。しかし、図書担当も、他の教員と同様、担任のクラスを持っており、図書館の業務に十分な時間を割けないのが現状。さらに、その教員が異動する際に、学校図書館の引き継ぎまで手が回らない場合もある。そういう時に教員をサポートするのが、営業担当やアドバイザーである」

アドバイザー制度が首都圏地区に限られているのは、首都圏の学校図書館におけるTRCのシェアが50%を超えているため。TRCは元々、「学校図書サービス」という学校図書館を中心に図書を納品する会社だった。そこが母体となって今のTRCという組織になったという歴史的経緯もあり、首都圏のシェアが高いのだという。

TRCに学校図書館が図書を注文するには、『学校図書館のためのブックカタログ』、「図書館のためのブックフェア」「TOOLi-S」などを通じて行う。ブックカタログは「知識と学習資料編」と「読み物編」の2冊があり、合計で出版社約250社・1万冊の図書を掲載している(2016年版)。このカタログは年に1回、4月に配布される。さらに、年に3回(春・夏・秋)ほど、新刊を掲載した『ブックカタログ増刊号』も配布している。また、ブックフェアは、ブックカタログに掲載した図書を中心に約1万冊を展示し、手にとって選書ができる展示会。毎年、全国約60会場で開催している。

車に本を山積みし 全国を3カ月行商

会場が遠いなどの理由で、展示会には行けないが、現物を見て購入したいという学校図書館の担当者や公共図書館の司書の要望に応えるために、先述した「ブックキャラバン」という訪問販売を通じて図書を注文することもできる。キャラバンに乗せる商品は、児童書では基本的にブックカタログに掲載している商品、一般書はTRC仕入部とPS事業部の営業担当者が選書した「図書館に必要と思われる図書」が中心となる。また、ゲームを端緒に日本刀にはまる女性が急増しているときには「日本刀の本」など、時事に即したテーマを設定し、出版社に協力を仰ぐケースもある。

この年3回のキャラバンを実り多いものにするために、全国で活動するプロモーターがTRC本社に集結し、出版社から直接、訪販商品の説明を受ける勉強会を定期的に実施している。図書館の担当者に購入してもらうため、全国のプロモーターたちに商品知識を得てもらう必要があるからだ。

「先日は児童書出版社の商品説明会を実施した。出版社には『この本は他社の類書とどこが違うのか、どのページを見ればこの本の特徴が分か るのか』など具体的なページを挙げて説明してもらっている。教員に対して最も説得力があるのが、『この本はこの授業のここで使える』という一言。最近のトレンドとなるテーマの類書が多い児童書はとくに購入のひと押しとなるアドバイスが必要となる」。

この勉強会で情報を得たプロモーターは、受け持つ地区の公共・学校図書館の担当者に片っ端からアポイントをとり、3カ月にわたる〝行商〟のスケジュールを作成して、訪問販売を開始する。出版社とは、各地域をまとめる担当責任者レベルで商品ごとの販売予想を立て、マージンの交渉をする。「我々がきっちり売って、出版社とTRCとがウィンウィンの関係にならないと意味がない。さらに、販売した先で、子どもたちに求められ、手垢がつくまで読まれなければ意味がない」。

1冊1冊、本の中を見てもらいながら、商品の説明をする――。このような対面販売こそ、本の商いの原点といえるのではないだろうか。

「人は商品を購入するとき、どんなにいいものであっても嫌いな人からは購入しない。信用できる人が勧めるからこそ、購入してもらえる」と瀬戸氏が言う通り、店頭で本を大量販売することを目的とせず、対面販売を通じて顧客と対話し、それぞれのニーズを大事にすることで、苦戦する町の書店は新たな活路が見出せるのかもしれない。

   

子どもが「答え」 みつけられる図書館を

TRCが持つ全国の学校図書館のシェアは約23%(7000校強)。TRCMARCの普及率が80%を超えている公共図書館と比べると低いが、「TRCにとって、学校図書館という市場でこれからやるべきことは多い。学校図書館法では学校に図書館を設置することが義務付けられており、文科省では学校図書館をきちんと子どもたちが利活用していくための方針を掲げている。しかし、実際に子どもや教員によって利活用されている学校図書館は現在どれくらいあるのだろうか」。

公共図書館以上に学校図書館の整備は遅れているかもしれない。これまで学校図書館を担当する教員が、学校図書館に十分な時間を割けなかった結果起きた〝開かずの図書館〟という問題があった。現在ではボランティアなどの協力もあり、開館時間を増やす学校図書館も徐々に増えてきているという。また、学校図書館の蔵書整備などを目的に、学校図書館図書整備5年計画という予算措置が平成5年から続いている。それでも、学校図書館の蔵書整備の目標である「図書標準」を達成している小学校は60.3%、中学校は50.0%と半数程度に留まる(文科省平成26年度調査)。

加えて、学校図書館の電算化も遅れているという。平成26年度の文科省のアンケート調査では、学校図書館の蔵書をデータベース化していると回答したのは70%に上ったが、子ども向けの検索などが可能なパソコンを設置している図書館は30%に留まった。つまり、蔵書はエクセルなど、何らかのかたちでデータ化はされているものの、パソコンと連動して検索できる学校図書館が3割しかないという状況だ。

「学校図書館が子どもたちになかなか利活用されないのは単純な理由だ。今の子どもたちは、調べものの答えが学校図書館にあるとは思っていない。子どもたちは今や、調べ物をする場所はインターネットだと思っており、図書館が自分の答えを導き出すことができる場所だと知らないのだ。しかし、図書館で調べて求める答えが得られることが分かれば、その子はこれからも図書館を使い続けてくれるはずだ」

「学校図書館をよくする答えは以前から出ている。まずは蔵書を充実させること。必要に応じて情報の古い図書の除籍をしながら、最新情報が掲載された図書に適宜入れ替える。さらに、それらの図書を活用できるように電算化し、学校司書などを配置する。司書教諭をはじめとした学校の教員と学校司書がきちんと連携し、授業で学校図書館の本が活用できる環境もつくる。そのために、国や自治体はきちんと予算をつける。そうすれば、これからを担っていく子どもたちが主役となる、学校図書館という教育のための専門図書館が利活用されてゆくだろう」

図書新聞 第3253号 2016年4月30日 (土曜日)付より 許可をいただいて転載しています。

掲載:2016.04.25

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