続・片言隻語

第3回 図書館司書の仕事 1.図書館は無料貸本屋ではない! 

 今や多くの日本人にとって、図書館は最も身近な社会教育・生涯学習施設、否、公共施設とでも言えるであろう。近年、日本では、図書館とは無料貸本屋のイメージも強い。多くの日本人は図書館と言えば、古い本が沢山あり、必要に応じて閲覧が出来、貸し出してもくれる所と言うイメージしかない。
 図書館とは、知識社会、全ての人がどのようなレベルや分野の知識や情報にも容易にアクセスでき、利活用できるように仕組まれた公共施設であり、情報の社会・公共圏へのポータル(トンネルの入り口)であるとの認識は低い。だが、現在の社会は、山の向こうに課題解決に必要な情報のある世界が広がっており、我々はその山の向こうの世界へ、図書館と言うトンネルを抜けて辿り着くことで課題解決しなければならない。21世紀の現代に生きる我々がトンネルを抜けて、到達を目指しているのは、雪国ではなく、駒子姐さんの待つ宿でもなく、課題解決の情報が待っている世界なのである。
 ただその情報の世界には多くの人がそれぞれに個別の情報要求をもって情報を入手しようとしており、広大な知識情報の公共圏で、効率よく求める知識・情報を見出してそれにアクセスし、課題解決に役立たせなければならない。その時に、情報の探索者・利用者、すなわち図書館の利用者には、最適な情報を入手するための案内役であり、伴走者が必要不可欠になるが、その伴走者こそが図書館の司書なのである。知識や情報を活用・活性化するには人間の頭脳が必要であり、これを現在の技術水準では、AIに置き換えることはできない。要するに、図書館を活用して良き学習者、研究者を育てるには有能な伴走者が必要となる。その役割を担うのが図書館司書の本来の使命であると言うことを再確認しておくことが必要である。

高山正也 

(掲載日:2022年11月24日)

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